愛知県陶磁美術館へ私たちが訪問した日、美術館では開館40周年記念特別企画展「瀬戸‐かく焼き繋ぎ 江戸時代の本業と新製」を開催していました。
学芸員さんから説明を聞きながらの鑑賞でもあり、展示品も今回の企画展のために各所から借り受けたものも多く、解説に納得しながら興味を持って回ることが出来ました。
40周年ということで特に力を入れて纏められたと思いますがよい展覧会でした。
この美術館はいまから40年前(1978年)、愛知県陶磁資料館として開館され、5年前(2013年)に現在の名称に改称されました。
その経緯については美術館のホームページに次のように述べられています。
愛知県陶磁資料館は、陶磁史上における愛知の位置に鑑み、日本における最大級の窯業地である愛知県瀬戸市に、愛知県政100年記念事業として1978(昭和53)年6月1日に開館しました。以降、日本やアジアを始めとする世界各地の様々なやきものの魅力を展覧会や関連催事を通じて紹介してまいりました。コレクションは3点の重要文化財を含む7,020点(平成27年3月末)となり、国内屈指の陶磁専門ミュージアムとして成長しております。2013(平成25)年6月1日に35周年を迎えたことを期に「愛知県陶磁美術館」に名称変更し、再出発いたしました。
こういったこの美術館の設立・成長の経緯からかと思いますが、これまで訪問した多くの美術館とはかなり異なり、展覧会はこの美術館の実施する事業の一つであって、それ以外にも同様に重要と考えて推進している事業が多いように思いました。
企画展は本館で開かれますが、常設展は本館で開かれている「日本と世界のやきもの」、「現代陶芸‐愛知の作家たち」、「堀田毅コレクション展」のほかに、南館の「愛知のやきもの『今』」、「愛知のやきもの1万年」、さらに西館で 「陶磁のこま犬百面相」を開催しており常設展が非常に充実しているように思います。
この他、作陶、絵付けの体験ができる作陶館、敷地内で発掘された平安時代~鎌倉時代の窯跡を保存する古窯館、室町時代の大窯と江戸時代の連房式登窯を復元し、焼成体験もできる復元古窯などがあり、見る施設、体験する施設など充実しています。
またこの美術館の敷地面積は280.480.47㎡と大変広く、先日訪問した岐阜県現代陶芸美術館も広いと思いましたが、その5割増くらいの面積で、ほとんどすべて平地ですので山中にある岐阜県現代陶芸美術館よりはるかに広く感じます。
この美術館は明確な特徴がないことが特徴といえるかと思います。
やきものの収蔵方針も特定の時代、種類、地域、作者などに絞らず、日本の物では、縄文、弥生、古墳、奈良時代から江戸、近現代陶磁まで幅広く収集し、海外の物も中国、韓国、東南アジア、中近東、ヨーロッパ、近現代海外産業陶磁、近現代海外陶磁など収集しています。
美術館では普通は企画展が最大のイベントのように思いますが、ここではそのほかに常設展などで焼き物技術の歴史的な進展、古代の人々の生活とのかかわり、現在の生活とのかかわりなどを展示、作陶体験などにも力を入れ、焼き物を作る人、使う人のやきものについての知識の幅を広げることも企画展以上に力を入れて進めようとしています。
最寄り駅はリニモ陶磁資料館南駅 |
敷地は大変広く健脚向きです |
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本館 この中に7つの展示室と 特別展示室などがある |
本館西面 |
本館中庭 |
南館 |
西館 |
古窯館 |
復元古窯 ここでは実際にこの窯を使って 焼成体験ができます |
初めに今回の企画展についての学芸員の説明があり、そのあと展示品の解説をしていただきながら回りました。
解説をしていただける時間が30分間と短かったことと、個々の作品についての質疑応答もの時間もあったので、残念でしたが解説をしていただいたものはごく一部でした。
聞きなれない”本業”と”新製”という言葉につて、その意味は下の美術館の説明の通りなのですが、学芸員の方の説明によりますと、やはり磁器生産が始まったころは陶器生産に携わっていた人々の危機感が大きく、陶器の技法で磁器同様の外観の物を作ろうという努力がされたとのことです。
そうした努力の末、制作されたものも展示されていましたが、特別企画展に出品されている作品には、この企画展のために特別に借用しているものもあるので、写真は遠慮してほしいとのことでパンプレット以外の画像はありません。
美術館のホームページには下記のように書かれています・
展覧会の概要
瀬戸においては、江戸時代を迎えると尾張藩の保護の元、まず陶器生産が盛んとなります。その後、新たに、
江戸時代後期の享和年間(1801-04)に有田地方から技術が導入された磁器生産が本格的に開始され、時流に乗って徐々に拡大しました。
それにより陶器製作者たちは、従来より行ってきた陶器生産を本来の仕事という意味、さらに、それに対する自負を込めて、 自らの仕事を「本業」と呼び、磁器生産は「新製」と呼び分けることとなりました。その後、「新製」は、ますますリードを広げ、
明治時代には、工芸品の海外輸出が本格化する中で、瀬戸の磁器製品は世界を舞台に脚光を浴びました。瀬戸ではこのように、 時に二つに分かれ競い合い、「焼き繋いで」現在の姿を形作ったのです。
本展は江戸時代を通して瀬戸の本業と新製を取り上げ、その代表的作例、記年銘のある作品などを展示し、
現在の窯業地・瀬戸の礎となったやきものづくりを紹介するものです。
本館特別展示室では開館40周年記念テーマ展示として「愛知うつわ物語―江戸・明治のやきものの展示がありました。
愛知県では現在『愛知県史58巻』の編纂を進めていますが、 陶磁美術館のホームページには以下のように記載されています。
陶磁美術館は平成30年度に開館40周年を迎えることから、同年度は「愛知」を視点の一つとした企画展示を順次開催します。本展では、これに『愛知県史・工芸』の刊行を併せて記念し、愛知県における近世・近代の陶磁工芸を展示紹介します。陶磁美術館所蔵品を中心に、県内各地域の陶磁工芸品が一堂に会する貴重な機会となります。地域の文化遺産である陶磁工芸を通じて、愛知県の歴史と文化について理解が深まることを目指します。
ここも写真は撮れませんのでネットにあった5枚だけです。
展示されていたものは、名古屋のやきもの、尾張のやきもの、三河のやきもの、狛犬、磁胎七宝などです。
色絵花蝶文鉢 永楽和全 甲山 明治10年(1877) |
摩竭(マカラ)文笹島焼 江戸時代後期 |
鉄釉水注 内海焼 明治19~24年 |
八ツ面焼 甕 加藤八右衛門 江戸時代後期 |
帆船文皿 古戦場焼 江戸時代末期 |
縄文土器・弥生土器・世界の土器 |
約40点の優品を選んだ名品コーナー |
古墳から奈良時代 |
灰釉多口瓶 |
平安時代 |
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重要文化財 葦鷺文三耳壺 平安時代末期 松永美術館寄贈 |
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鎌倉時代ー南北朝時代 |
室町時代 |
同左 |
桃山時代 |
江戸時代 |
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色絵美人人形 17世紀後半 |
先年アメリカのメトロポリタン美術館 に行ったとき、これと同じ型によると 思われる人形を見ました、 形は全く同じで着物の柄だけが 異なっていました。 ここをクリックすると両方が見えます |
国産磁器の誕生 17世紀 |
江戸時代後期 |
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江戸時代末期~明治時代 |
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明治時代 |
同左 |
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大正時代 |
多くの国、地方のやきものの歴史を知ることが出来るものが多く展示されていました。
主なところは鑑賞し、写真も撮りましたが、全体に何がどういうまとめ方で展示してあるかを理解しないで見ましたので、今このページをまとめているとまだ見るべきところがあったと残念に思っています。
もっと時間をかけてよく見れば本当に世界のやきものがわかるよい企画(常設展ですが)だったと思います。
それでも私には充分勉強になりました。
本館地下で『現代の陶芸‐愛知の作家たち』として明治初期から今日までの愛知の作家たちの作品が展示されていました。
展示されていた作品は愛知県陶磁美術館の所蔵品が主体でしたが、瀬戸陶芸協会、常滑陶芸作家協会などからの作品も混在しているため展示品の撮影はできませんでした。
本館地下展示会場 |
この美術館へは2日間かよいましたがそれでも南館と西館は見ることが出来ませんでした。
また改めて行こうと思っています。