この美術館にはちょうど10年前の9月にも来たことがあります。
その時は特別展として 『創立250周年記念 ウェッジウッド~ヨーロッパ陶磁器デザインの歴史~』 が開かれていました。
ウェッジウッドの製品の展示にはそれ程感激しませんでしたが、磯崎新設計の美術館の建物とその環境は素晴らしいと思いました。
美術館のホームページの施設ガイドに記載されている磯崎新の設計コンセプトによれば、緑のままの自然を残して、その隙間に人工的な建造物をつくることを課題としたが、美術館は三方を山で囲まれており、自然を守り景観を壊さないためには、まず山の尾根を残すこと、またアプローチの道のために谷を埋めないで橋とし、尾根に掘られたトンネルを介してはじめて目的の美術館の玄関、というよりもテラスに到達することにしたとなっています。
また、この美術館の大きな特徴のもうひとつは免震構造です、現代陶芸美術館はセラミックパークMINOの建物の1部なので、セラミックパークMINOの1回り大きな構造物の中に展示室部分が5m吊り下げられている構造になっています。
このようにしてこわれやすいセラミックを展示する展示室部分だけが免振にしてあります。
2002年の完成・開館ですのでまだバブルの余韻が残っていたためこのような贅沢な設計が出来たのかもしれません。
今回再度訪問するにあたって美術館に電話で問い合わせたり、ネットなどで調べたりしましたが、入館者数も減少しており、前回あったフレンチレストランも喫茶のカフェになっていることがわかりました。
そんなことから設備にも、展示にもあまり大きな期待を持たないで訪問しました。
今回開かれていた特別展は 『明治工芸から現代アートへ~驚異の超絶技巧~』 というものでした。
入館し展示品を見て、初めは陶芸とは関係のないような作品がほとんどで、異質の作品ばかりにとまどいました。
しかし展示品を細かく見ていくうちに、これらはほかの美術館にある所謂美術品として見るより工芸作品として見るべきものだと思えてきました。
そう思って見ると展示されている作品はすべて素晴らしい工芸品で、まさに 『驚異の超絶技巧』 です。
その”驚異”の例ですが、このページの最上部のタイトルの中にある三つの作品の素材、一番左は牙彫(象牙)、次は流刻(鉄、銀、赤銅)、次は金工(アルミニウム)です。
作品を見てから素材を見ると本当に”あっと”驚きます、写真は撮れませんでしたので、パンフレットにあるものと美術館のホームページに出ていたものしかこのページに乗せられませんが、展示されていたものはすべて驚異の技巧を駆使したものばかりでした。
他に木工、漆工、陶磁、七宝、石彫、自在などの作品が144点展示されていました。
特別展のテーマの現代アートとしても、現代の若い芸術家がこういった驚異の技巧に挑戦し完成していることは本当に頼もしく思います。
5月に訪問した横山美術館でも明治・大正時代の輸出用陶磁器のすばらしさに感激しましたが、今回はそれ以上でした。
陶磁器でも宮川香山の高浮彫『崖に鷹大花瓶』が展示されていましたが、横山美術館で展示されていた宮川香山の作品より手が込んでいるように思いました。
今回の特別展展示されている作品の半数ほどは、京都の美術館『清水三年坂美術館』から借りたとのことです。
私はこの『清水三年坂美術館』のことを全く知りませんでしたので、調べますと村田製作所の役員だった村田理如氏が2000年に開館した美術館で、幕末から明治にかけて作られた日本の工芸品約1万点を収蔵しており、館長の村田理如氏が海外に流出した優れた工芸品の買い戻しに20年余にわたって尽力した収蔵品は質量ともに世界屈指を誇るとのことです。
また美術品の貸し出しを積極的にしているようで、今回のこの岐阜県現代陶芸美術館の展覧会と同じ 『明治工芸から現代アートへ~驚異の超絶技巧~』が山口県立美術館、富山水墨美術館、あべのハルカス美術館でも展示予定です。
他にも数点ずつの貸し出しの予定があるとのことです。
また別の話ですが、この岐阜県現代陶芸美術館の建物も環境の整備もしっかり行われていて、建設後ほぼ20年経つのに古ぼけた感じが全くありませんでした。
展示室内では写真が撮れませんでしたが、パンプレットに16点の優れた作品が掲載されていますので、これを見てください。。
美術館で撮影を許可していた本郷真也の『流刻』と宮川香山の2点の『崖ニ鷹大花瓶』は撮影したものを載せています。
そのほか、美術館のホームページにあった6点とネットにあった4点と美術館のミュージアムショップで購入したはがきの作品も載せています、ホームページの6点中の5点はパンフレットにも載っていますが撮影の差なのか色合いなどが違います。
はじめ牙彫(象牙の彫刻)の胡瓜を見てそのあまりに実物そのままの姿にに驚きましたが、見てゆくと展示されているすべてに同じ驚きを感じながら鑑賞しました。
パンフレットの中の作品をクリックすると拡大表示されます
上記のように私が会場で撮影したのは鍛金の流刻(サンショウウオ)と崖に鷹大花瓶のみです。
あとは岐阜県現代陶芸美術館のホームページとネットにあった画像と美術館のショップで買ったはがきの画像です。
ここには画像はありませんがが、会場で見た橋本雅也の彫刻〈ソメイヨシノ〉、〈キク〉、〈タカサゴユリ〉、〈ダッチアイリス〉は鹿の角から削り出したとは思われない薄く繊細な花びらの美しさに驚嘆しました。
自在について、上のパンフレットにある満田晴穂の蛇の骨格のほか同じ作者の各種昆虫、大竹亮峯の〈鹿の子海老〉、〈眼鏡饅頭蟹〉など極めて精巧な作品で見飽きませんでした。
特別展に時間をとられ、コレクション展はじっくり見られませんでした。
見ることは見ましたがほとんど記憶に残っていません。
それで約1か月後もう一度訪問して見てきました、驚異の超絶技巧といったものはありませんでしたが私が幼ったころ近所の窯焼きの工場で見たようなものが出ており懐かしく見て回りました。、
河井寛次郎 碧釉貼文手壺 |
山田光 二つの口の壺 |
富本憲吉 色絵金銀彩四弁花模様飾壺 |